結論から言うと、これはレコードを聴くよりも映像を観るべきだと思います。

しかし、音だけでも充分すぎるほど素晴らしいのです!


1968年にリリースされ、久しぶりにTOP10入り(全米8位)を果たした本作には、
「IF I CAN DREAM」(全米12位)、
「MEMORIES」(全米35位)、
が収録されています。

本作は1968年暮れに放映されたTV特番『ELVIS』のサウンド・トラック盤です。
出演映画ではなく、TV特番のサントラというのも凄い話ですが、よく考えたらBEATLESの『MAGICAL MYSTERY TOUR』という前例がありましたね。
しかし、放映当時は賛否両論状態だった『MAGICAL~』とは違い、このTV特番『ELVIS』は驚異的な高視聴率と好評価を得ることが出来ました。
実際にこの特番でのELVISの歌唱や番組自体の構成も素晴らしく、ELVISの完全復活を視聴者に印象付ける内容でした。
個人的に60年代の音楽物の映像では、これが一番気に入っています。

このアルバムはTV特番のために新たに収録された曲や御馴染みのヒット曲、そしてELVISが昔から慣れ親しんできた曲のスタジオ・ライヴを中心に構成されています。
本作は、ELVISのデビュー当時から現在に至るまでの集大成のような作品ですが、ある意味アメリカン・ロックの集大成とも言える作品だと思います。
特に、本作からはELVISのルーツ・ミュージックに対する深い愛情が伝わってきます。
この1968年という時期は、BOB DYLANやTHE BANDらによるルーツへの回帰が静かなムーヴメントになっていましたが、それらの動きと、ここで見ることができるELVISの原点回帰の姿勢とは全く意味合いが違うと思います。
なんせ、カントリーやゴスペル、R&B、ブルースをクロス・オーヴァーさせた先駆者はELVIS自身であったのですから!

とは言っても、本作では過去のELVISだけではなく、”今”のELVISも素晴らしいことを再認識させてくれます。
特にアルバムの最後を飾るELVIS初のメッセージ・ソング、「IF I CAN DREAM」における圧倒的な力量のヴォーカルは、1968年のELVISだから出来る熱唱だと思います。