あまり深い意味はありませんが、新しいカテゴリーを作ってみました。
ここでは”ブリティッシュ・ビート”や”60年代”というキーワードに拘らないでいこうと思います。

とはいえ、第一弾は60年代のブリティッシュ・ビートに関してですけど・・・(苦笑)

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60年代のイギリスにハーマンズ・ハーミッツというビート・グループがいました。

一時期のアメリカではビートルズに迫る程の人気を得た彼らですが、現在ではお話にならないくらい低い評価しか得ていません。

その要因としては、彼らがお子様向けのビート・グループであったことや、自作曲が少なかったこと、それにレコーディングの際にスタジオ・ミュージシャンを使っていた、ということが挙げられると思います。

これら三点の要素がセットになっているビート・グループは一般的に軽く見られがちです。

ただ、スタジオ・ミュージシャンを使うということは、その当時それほど珍しいことではありませんでした。

それについて、ハーマンズ・ハーミッツのリーダーであるピーター・ヌーンは以下のような発言をしています。

「スタジオ・ミュージシャンを使ったのは短時間で効率良くレコーディングをしたかったからで、特別な意味はない。」

当時、人気絶頂だったハーマンズ・ハーミッツは全米ツアーやテレビ・映画の出演などで忙しく、レコーディングの時間もままならない状態だったと思われます。
しかし、時間が無いからといってレコーディングで手を抜くわけにはいきません。
そこで、効率良くレコーディングを終わらせるためにスタジオ・ミュージシャンが登場することになったのです。

もちろん、それ以外にグループのメンバーの演奏技術が拙い、ということもスタジオ・ミュージシャンを使う理由としてはあったと思います。
でも、ライヴなどではメンバー自身が演奏しているわけですし(演奏はかなりヨレヨレですが・・・)、メンバー達の演奏がレコーディングの際にまるっきり使えなかったというわけではないと思います。

ただ、それでも敢えて演奏技術の高いスタジオ・ミュージシャンを使ったのは、より完成度の高い音楽をファンに提供したいという作り手側のプロフェッショナルな姿勢も関係していたと思います。

また、ハーマンズ・ハーミッツはどうか分かりませんけど、当時のレコード会社との契約には”レコーディングの費用はアーティスト側の自己負担”ということが多々ありました。
ハーマンズ・ハーミッツのような人気グループの場合だと、スタジオ使用料などの心配をする必要はありませんが、経済的に余裕のない(?)ビート・グループの場合だとレコーディング費用の捻出は大問題です。
そういった場合も、スタジオを長時間使って高い使用料を支払うより、スタジオ・ミュージシャンを雇って一発でレコーディング終わらせた方が安上がりだったようです。

そんなこんなの理由で、数多くのビート・グループのレコーディングにスタジオ・ミュージシャンが多用されました。
細かい記録はありませんが、60年代中頃までは彼らが参加していないレコーディングの方が少ないかもしれません。
なので、レコーディングの際にスタジオ・ミュージシャンを使ったとしても、別に恥ずべきものではないと思います。

ちなみに当時の売れっ子スタジオ・ミュージシャンとしては、ヤードバーズ加入前のジミー・ペイジ、その相棒のジョン・ポール・ジョーンズ、このブログでも少し前に取り上げたビッグ・ジム・サリバンなどがいます。
彼らは数多くのレコーディングで素晴らしい演奏をしています。
また、ジョン・ポール・ジョーンズのように編曲面などでも多大な貢献をしている人もいます。
彼らは”ブリティッシュ・ビート”を縁の下で力強く支えていました。

そんな縁の下の力持ち的な存在の彼らですが、最近ではいろいろな音楽サイトなどで取り上げられることが多くなりました。
今まで日陰にいた人達に光を当てるのは素晴らしいことだと思います。
それは私も見習わなければいけないと思います。

ただ、そんな風潮の中にもちょっとだけ気になることがあります。

それは、(ある特定のアーティストの)個性や方向性を作り上げたのはスタジオ・ミュージシャンだ、という意見です。

音楽に対していろいろな意見があるのは結構なのですが、これはどうでしょうか?