「BILLY FURYは素晴らしいアルバムを出している。今はなくしてしまったけれど、本当にあれはいいアルバムだ。(中略)彼の歌は自分で作ったものだった。そして、自分の知っている連中と一緒に演奏をしていた。」

私がBILLY FURYの名前を初めて知ったのは、ROLLING STONESのKEITH RICHARDSの古いインタビュー記事でした。

BILLY FURYはCLIFF RICHARDと同世代の英国人ロッカーです。
彼の歌のスタイルはELVISの強い影響下にありましたが、彼はただ物真似をするだけではなく自分で曲作りをしていました。
私には、”BEATLES以前”の英国の音楽シーンといえば、作詞・作曲はプロの作家で、演奏はスタジオ・ミュージシャンによる完全な分業体制、という前時代的なイメージがありました。
しかし、”BEATLES以前”の英国にも自作自演のアーティストが存在していたのです。
これは”何でも最初はBEATLESから始まった”と思い込んでいた私にとって驚きの事実でした。
しかも、あまり同業者を簡単には褒めない(そんなことはないかな?)KEITHが絶賛しているのです。
このインタビュー記事を読んだのは学生時代のことでしたが、それ以来BILLY FURYは聴かなければいけないアーティストの一人になりました。

そして、それから20年近く経って(苦笑)ようやく入手したのが、このライヴ・アルバム『WE WANT BILLY !』です。

1963年にリリースされた本作は全英14位を記録しました。

本作はスタジオ内に彼のファンを動員して収録したスタジオ・ライヴ盤で、A面がR&RやR&Bのカバー曲、B面が彼のヒット曲を中心に構成されています。

ここで注目なのがA面です。
A面はR&RやR&Bのカバーばかりですが、自分が好きだったり憧れていた曲をただ単純にコピーしているわけではありません。
BILLY FURYはELVIS PRESLEYの強い影響下にあるシンガーですが、「THAT'S ALL RIGHT」のカバーはオリジナルと全く違う雰囲気に仕上げています。
冒頭の「SWEET LITTLE SIXTEEN」にしても同様です。
白人のCHUCK BERRYカバーにありがちな軽薄なR&Rではなく、ここにはしっかりとした”ビート”が刻まれています。
これはまさしく”ブリティッシュ・ビート”です!
他人の曲をオリジナル以上のレベルに昇華させるのはブリティッシュ・ビートのお家芸のひとつですが、ここでの曲も”英国の音”に仕上がっていると思います。
”ブリティッシュ・ビート”は”ビートルズ以前”にもしっかり存在していたのです!

ただ、彼の主演映画挿入歌などのヒット曲が中心のB面はやや退屈な出来かもしれません。
こちらには彼の自作曲なんかもあるんですけどね・・・

また、本作でバック・バンドを務めているTORNADOSにも注目です。
「TELSTAR」の全米No.1ヒットで有名なTORNADOSですが、元々はBILLY FURYのバック・バンドとして編成されたグループです。
お互いに気心が知れている彼らはこのライヴ盤でも息がピッタリです。
それに、本作ではJOE MEEKのプロデュース下の分厚いエコー・サウンドの中で曇ってしまいがちなTORNADOSのバンドとしての生身の姿を垣間見ることができます。
本作での躍動感溢れる”ライヴ・バンド”としてのTORNADOSは非常に魅力的だと思います。