サブブログ『新・自己満足レコード館』で記事にするために、久しぶりにこのアルバムを聴きました。

HELEN SHAPIROの『HELEN IN NASHVILLE』(1963年)です。
これは本当に素晴らしい作品です。

本作はアルバム・タイトルにあるようにナッシュビルで録音されました。
レコーディングにはセッション・ギタリストとして有名なGRADY MARTINや、ELVISのバック・ヴォーカルでお馴染みのJORDANAIRESが参加しています。

プロデューサーは彼女をデビュー時から手掛けていたNORRIE PARAMORです。
説明不要ですが、彼はCLIFF RICHARDを大スターにした大物プロデューサーです。
本作でも彼女のために最高の録音環境とミュージシャン達、それにハズレのない良質な楽曲を用意しています。

このようにわざわざ海外まで行って制作されたのにもかかわらず、本作はあまり売れませんでした。
その原因はマージ―ビート・ブームです。
本作の収録前に行われた彼女がメインのパッケージ・ツアーで前座を務めていたのはBEATLESでした(彼女と「FROM ME TO YOU」や「MISERY」についてのエピソードは有名だと思います)。
しかし、本作が発売された頃にBEATLESは彼女を凌ぐほどの大スターになっていました。
彼女の支持層であったと思われる少年・少女達は、みんなBEATLESなど新しいビート・グループに乗り換えてしまったのでしょう。
ただ、あまり売れなかったからといって、本作の内容が悪いわけではありません。
むしろ60年代の英国産ガール・ポップのアルバムとしてはベスト5に入る内容だと思っています。

この時期には(DUSTY SPRINGFIELDが在籍していた)SPRINGFIELDSもナッシュビルでレコーディングをしています。
同じナッシュビル録音でもSPRINGFIELDSが本場のカントリーに挑戦したのに対して、こちらは王道のポップス路線です。
本作の収録曲は非常に質が高いですし、ナッシュビルの腕利きミュージシャン達もいい仕事をしています。
しかし、能天気なアメリカン・ポップスにはなっていません。
純アメリカ産サウンドのはずなのですが、どこから切っても”英国の音”になっています。
やはり、それは彼女の英国的な湿った歌声と高い歌唱力によるものでしょう!
これまでとは全く違った環境下でも堂々と歌い切ってしまう17歳。
本当に凄い才能としか言いようがありません。
でも、中身の良さと売上は必ずしも一致しないんですよね。