私は長い間、KINKSというグループをあまり好きではありませんでした。

その理由はいくつかあります。

まず、ひとつは最初に聴いた1stアルバムの印象が悪かったことです。
そのことについては、いずれ1stアルバムを取り上げた時に書こうと思います。

また、私の好きなブリティッシュ・ビート・グループは個性的で実力のあるヴォーカリストが在籍していたグループでした。
ROLLING STONESのMICK JAGGER、SMALL FACESのSTEVE MARRIOTT、ANIMALSのERIC BURDON、MANFRED MANNのPAUL JONES、そしてDAVE CLARK FIVEのMIKE SMITH・・・
それらの実力派ヴォーカリスト達と比べると、RAY DAVIESの歌唱力は明らかに見劣りするように感じられました。
個性的なヴォーカリストではあったけども・・・

それに、私が洋楽を聴きはじめた時の状況も関係があります。
私がリアル・タイムで最初に聴いたKINKSの作品は『THINK VISUAL』(86年)でした。
当時の私はこのアルバムにも魅力を感じませんでしたし、私の友人達の中にもKINKSに興味を示す者は誰もいませんでした。
この当時のKINKSは活動こそ続けているものの、過去の存在になりつつありました。
実際、この時期以降、彼らの作品はチャート上でも苦戦が続きます(『THINK VISUAL』は全米81位)。
同じ60年代からの生き残りバンドでも、その当時(今もかな?)現役バリバリだったROLLING STONESとの差はあまりにも大きいように感じられました。

そんなこんなで、KINKSは私の中で極めて低い評価しかしていませんでした。
ほんの少し前までは・・・

そんなKINKSの評価を一変させたのがこのアルバムでした。



1967年にリリースされ、全英35位を記録した本作には、
「WATERLOO SUNSET」(全英2位)、
「DEATH OF A CLOWN」(全英3位)、
が収録されています。

彼らの代表曲でもある「WATERLOO SUNSET」を始めとする本作の収録曲は粒揃いです。
「DAVID WATTS」、「DEATH OF A CLOWN」、「TIN SOLDIER MAN」、「SITUATION VACANT」、「AFTERNOON TEA」・・・
派手さはありませんが、どれも良い曲ばかりです。
不思議なことにこれらの曲は聴く度に味わい深さが増してきます。



あくまでも個人的な見解ですが、KINKSというグループは特に演奏が上手いわけでもないですし、器用でもないと思っています。
しかし、本作ではKINKSというグループが先天的に持っているヘタウマさと、フォーク・ロック的サウンドが見事に融合しています。
これは他のグループにはない素晴らしすぎる個性だと思います。

それに、彼のヘタウマ・ヴォーカルもこのサウンドの中では水を得た魚のように活き活きしています。
本作での彼のヴォーカルは非常に人間味に溢れ、温かみが感じられます。
”技巧派”とまでは敢えて言いませんけど(笑)、以前よりも確実に表現力が増していると思います。

このようなサウンドを発見して作り上げたRAY DAVIESはやはり只者ではありません。