最近、なぜか聴く機会が多いレコードです。

DENNY SEYTON & SABRESの『IT'S THE GEAR』です。

ちなみにジャケットの写真は彼らではありません(笑)

DENNY SEYTON & SABRESはリバプール出身のマージー・ビート・グループです。
彼らは英MERCURYから数枚のシングルをリリースしましたが、3rdシングルが超マイナー・ヒットを記録した以外は、ほとんど話題になることがありませんでした。

しかし、彼らは同郷のBEATLESなどと同様、ドイツ巡業などで鍛え上げられた実力派グループでした。

そんな実力派の彼らに舞い込んだのが、当時のヒット曲をカバーする企画盤の仕事でした。

このような企画盤は制作費を極力抑えてナンボの世界です。
彼らのように実力はあってもギャラが安そうなビート・グループはうってつけ存在です。
また、この手の企画盤では様々な種類の曲を演奏しなければいけませんが、彼らは水準以上の演奏力があると評価されていたのでしょう。

勿論、この企画盤は空前のビート・ブームに便乗したものです。
収録曲はこんな感じです。

このアルバム、良い曲とイマイチな曲の差がはっきりしています。
「HIPPY HIPPY SHAKE」や「GOOD GOLLY MISS MOLLY」なんかの出来は悪くないですし、「NOT FADE AWAY」はなかなかカッコいいです。
彼らはこの手の硬派な感じのR&BやR&Rをやりたかったのでしょう。

それとは対照的にBEATLESのカバー曲などは、ややイマイチです。
彼らの本領が発揮された感じの「NOT FADE AWAY」なんかと比べると、それらは明らかにロー・テンションな演奏です。
「CAN'T BUY ME LOVE」なんかは、元気があるのは最初のうちだけです(笑)
これらの曲は仕事だから渋々演奏したのかもしれませんね。
いくら気乗りしない曲だとしても、もう少し楽しそうにやった方がいいと思います(苦笑)

また、DC5のカバー2曲は気の毒なくらいスカスカなサウンドです。
本家のサウンドとは、これが同じ曲なのか!?というくらいの大きな違いがあります。
これはこの手の企画盤にありがちな安っぽいプロダクションのせいで、彼らの責任ではないのですが・・・
それにしても変なところでDC5サウンドの凄さを実感できました(笑)

本作での彼らはいろいろなタイプの楽曲をそつなく演奏していますが、やや柔軟さに欠ける感じがします。
やはり、良い曲とそうでない曲の差が大きすぎるのが気になりますね。
彼らにはどんな曲であっても水準以上に聴かせる力量が不足しているように感じます。
この辺がそれなりに実力があってもメジャーになりきれなかった要因なのかもしれません。