今日は予定を変更して、ひとつ前の記事と関連したアルバムの登場です。

SUPREMESの『A BIT OF LIVERPOOL』です。

彼女らの3作目のアルバムとして1964年にリリースされた本作は、全米21位を記録しました。

1964年といえば、アメリカではBEATLESの上陸にはじまるマージー・ビート旋風が吹き荒れた年です。
この空前のマージー・ビート・ブームを目にした商魂逞しいアメリカの業界人達は、当然のように便乗商品を作りあげます。

例えば、こんなのです。

これらの多くは偽英国人(というかアメリカ人)による、擬似マージー・サウンドだったりします。
そして、その大半が超低予算で制作され、極めて怪しげなレーベルから発売されていました。

そんな中でも、この『A BIT OF LIVERPOOL』はメジャーなアーティストから初めて出された便乗(?)アルバムといえます。

本作はアルバムのタイトルからもお分かりのように全てマージー・ビートのカヴァーで構成されています。
収録されているのはBEATLESやGERRY & THE PACEMAKERS、PETER & GORDON、DAVE CLARK 5、ANIMALSのカヴァー曲です。
BEATLESの提供曲を歌っているPETER & GORDONはともかくとして、DC5やANIMALSはマージー・ビートではないだろうという声も聞こえてきそうですが、細かいことを気にしてはいけません(笑)

マージー・ビートのカヴァー曲が中心の本作ですが、注目点は多いです。
まずは、快進撃が始まった直後のSUPREMESが流行のマージー・サウンドをどのように歌い上げるか、そして英国勢にも強い影響を与えたモータウンの腕利きミュージシャン達がどのような演奏をするのか、また英国勢がカヴァーしたモータウン・ナンバー「YOU'VE REALLY GOT A HOLD ON ME」と「DO YOU LOVE ME」が先祖帰りしてどのような化学反応をおこしたか、などなどです。

しかし、本作を聴くとちょっとだけ肩透かしを食らってしまいます。

このアルバムでのマージー・ビート・カヴァーはオリジナルに忠実です。
でも、ここで聴きたいのは原曲どおりのカヴァーなんかではなく、モータウン流に料理されたサウンドです。
はっきり言って、「HOUSE OF THE RISING SUN」などのいくつかの曲はDIANA ROSSの個性に合っていません。
もう少し彼女らの個性にあったアレンジや選曲が必要だったと思います。

それにモータウンの腕利きミュージシャン達の演奏もどこかよそ行きな感じです。
彼らにはマージー・ビートという素材が扱いにくかったのでしょうか?
それとも原曲のイメージを崩すなという指示でもあったのでしょうか?
どちらにしても、これではちょっと面白味に欠けてしまいます。

また、「YOU'VE REALLY GOT A HOLD ON ME」と「DO YOU LOVE ME」は英国勢のカヴァーというよりも、普通にモータウン内のカヴァーになってしまっています。
「DO YOU LOVE ME」なんかはDC5の爆音カヴァーに対する、モータウンからの回答を聴きたかったのですが・・・