DVD BOX 『THE STORY OF BEAT-CLUB VOLUME 1』の中で、ちょっと興味があった映像です。

この時期(1967年)のドイツのテレビにJIMMY CLIFFが出演していたのは驚きでした。
当時の彼が活動拠点にしていたイギリスでは(以前このブログでも取り上げた)DESMOND DEKKERやPRINCE BUSTERなどの活躍によって、一般レベルにもジャマイカの音楽(スカ、ロックステディ)が徐々に認知されつつありましたけど、ドイツではどうだったのでしょうか?
ドイツには英国とは違ってジャマイカからの移民なんてほとんどいなかったでしょうから、ジャマイカの音楽にはあまり馴染みがなかったと思われます。
そんな状況の中でJIMMY CLIFFがドイツの視聴者にどのよう映っていたのか、ちょっと気になります。
ドイツではEQUALSの人気が高かったですけど、彼らにブルー・ビートっぽさは少ないですからね。

JIMMY CLIFFは本国ジャマイカで若くしてスターになった人です。
彼はさらなる成功を求め、かなり早い時期に渡英しましたが、その後はなかなかヒット曲に恵まれませんでした。
この『BEAT-CLUB』の映像はそんな彼がもがき苦しんでいた時期の貴重な記録です。
ちなみに、この映像の時点でも彼はまだ十代でした。
そのような年齢には全然見えませんね(笑)

そんなJIMMY CLIFFの一般的なイメージとしては、BOB MARLEYと並ぶレゲエ界のスーパースター、または主演映画『HARDER THEY COME』の主人公のような反逆のヒーロー、みたいな感じでしょうか?

でも、私の印象はちょっと違っています。
彼には『HARDER THEY COME』の主人公のような血走った目よりも、穏やかな眼差しの方が似合っているように思います。
私は彼の歌声の中に優しさや温か味を感じます。
決して歌がもの凄く巧いわけではないかもしれませんけど、彼には”歌心”があるような気がします。
それは私が思い浮かべる彼の代表曲が「HARDER THEY COME」ではなく、この曲だからだと思います。

JIMMY CLIFF最大のヒット曲、「WONDERFUL WORLD, BEAUTIFUL PEOPLE」(全英6位、全米25位)です。

この曲は英TROJANから発売された、『JIMMY CLIFF』(1969年)に収録されています。


音楽ファンの中にはレゲエがちょっと苦手という方もおられると思います。
しかし、このアルバムはそんな方にも非常に聴きやすいと思います。
曲のベースとなっているのは勿論ジャマイカ特有のリズムなのですが、それに乗っている音は実にメロディアスです。
メロディー・メーカー、コンポーザーとしての彼はもっと評価されていいと思います。
それに彼にはラスタファリアニズムに代表されるようなジャマイカ独特の世界観へのこだわりがあまりないのも、一般的な音楽ファンの方には馴染みやすい部分かもしれません。
あくまでも良い意味ですが、彼の音楽はあまりジャマイカっぽくないような気がします。
それは彼が早い時期から海外で活動していたからなんでしょうね。
”ブリティッシュ・ビート”の波や”スウィンギング・ロンドン”も彼は体感していたでしょうし、若い多感な時期に海外でいろいろな体験をしてきたことは、彼の世界観や音楽にも多大な影響を与えたはずです。

「ジャマイカの音楽に興味があるけど、どこから聴いて良いか分からない」という方には、このアルバムから聴くと入り込みやすいかもしれませんね!