ブリティッシュ・ビート勢に愛されたR&Bシンガーの中にARTHUR ALEXANDERという人がいます。

最近、私はこの人の曲が妙に気になっています。

この人は南部出身のR&Bシンガーで、60年代初頭を中心にいくつかのヒット曲を持っています。
彼のヒット曲は、
ANNA(GO TO HIM) (1962年 全米68位)、
WHERE HAVE YOU BEEN (1962年 全米58位)、
YOU BETTER MOVE ON (1962年 全米24位)、
EVERY DAY I HAVE TO CRY SOME (1975年 全米45位)、
といったところです。
まずまずの活躍ぶりといえるかもしれませんが、同時期に人気が高まりつつあったモータウン勢や、(これよりもう少し後ですが)同じ南部出身者を中心としたスタックス勢の人気と比べると、どうしても見劣りしてしまいます。

しかし、彼はモータウンやスタックスと同等以上の評価を英国のミュージシャンから得ていました。

それはBEATLES、というよりもJOHN LENNONの彼に対する敬愛ぶりからも分かります。
BEATLESは『PLEASE PLEASE ME』でANNAをカヴァーしていますし、ハンブルグのライヴでも「WHERE HAVE YOU BEEN」、BBCのセッションでも「A SHOT OF RHYTHM AND BLUES」をカヴァーしています。
しかも、JOHNはその全てでリード・ヴォーカルをとっています。

もちろん、彼を敬愛していたのはJOHN LENNONだけではありません。
BEATLESの他に、ROLLING STONES、GERRY & PACEMAKERS、HOLLIES、MINDBENDERSなども彼の曲を熱烈カヴァーしています。

それにしても、大成功を収めたR&Bシンガーとは言い難い彼が、何故これほどまでに英国のミュージシャン達から支持を得たのでしょうか?

ARTHUR ALEXANDERは南部出身者ですが、他の南部出身のR&Bシンガーのようなディープな歌い方はしません。
どちらかといえば、ほのぼのとした軽いタッチの歌い手です。
しかし、その中に垣間見える彼の物悲しい雰囲気が、イギリス人の琴線をくすぐったのかもしれません。
また、南部出身の彼の曲にはカントリー風味が所々にまぶされているのも、隠れカントリー・ファン(?)が多い英国のミュージシャンには受け入れやすかったのでしょう。
このような彼のサウンドはあまり”黒っぽい”とは言えません。
(STONESは別にしても)ロンドンR&B系ビート・グループに彼のカヴァー曲が意外と少ないのは、その辺が物足りなく感じたのかもしれません。
でも、彼の単純そうに見えるが実は色々なモノが内包されているサウンドは、”雑食性”が強いリバプールやマンチェスターのビート・グループにとって”宝物”みたいな存在だったのだと思います!

そういえば、この曲もJOHNのレパートリーでしたね!